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ブラック・クランズマンのgnspのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
5.0
潜入捜査のヒヤヒヤ・ワクワク感はもちろん、スパイク・リーが伝えたいこともしっかりと詰まった、骨太かつ「待ったなしだぞ、お前はどう思う?」と容赦なく問題提起をしてくる作品。

デンゼル息子演じるロンとKKKの電話シーンはもはやコメディ。黒人の口からとんでもない罵詈雑言が飛び出すのもビジュアル的に強烈だったし、KKKの持つ黒人差別の理由をどんどん看破していく様は痛快だった。
しかしその一方で対面シーンはひとつ狂うと一気にまずくなりそうなヒヤヒヤ感が充満、そこにあまりにも危ういKKKの思想が重なり異様な雰囲気になっていた。
そんな中でアダム・ドライバーの大人しそうな顔から繰り出されるヤベー発言のギャップ。でもそもそも支部リーダーのウォルターが頭良さそうで気の大きくない典型的インテリな印象だったし、逆に彼の存在こそが、そんな人も黒人差別に傾倒しているのか、という哀れみと恐ろしさを感じさせた。
その一方でちゃんと、もはや「アイコン的」にいたポール・ウォルター・ハウザーが演じたアイヴァンホー。彼の無学でデブで…っていう救いようのないアホ演技は「アイ、トーニャ」に続いて最高なんだけど、そんなどうしようもない奴の唯一の拠り所になっているのがこの「団体」なのだと思うと素直に笑うことは到底出来ない。
彼らが射撃練習に使う的。それ自体は想像に難くなかったが、撮影時のエピソードを聞いて非常に恐ろしく感じた。

物語的には一応の完結を迎えるのだが、しかし今なお「憎悪」は終わってくれなかった、終わっていない。
銃を構える人、犠牲となる人、肌の色の問題なんて「悪い意味で」消え去ってるんだ。
身勝手なイデオロギーが交差しまくる、もはや「カオス」でしかない現代をスパイク・リーは容赦なく記録し、そして突きつけて「作品」自体は終わる。
しかし作中で起こってること、今でもなーんにも解決してないよね?
作品的に綺麗じゃないという意見ももっとも。でも序盤パートで黒人活動家クワメ・トゥーレの演説をしつこいくらいに垂れ流ししたのを見れば、この最後の「実録」を入れるのは必然的だと自分は感じた。

ロンとフリップのようなヒーローはいないのか、それともこの映画を観たそれぞれが2人の努力の火が十字架に引火せぬように灯し続けるのか。今一度考えなくてはならない。
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