ボブおじさん

存在のない子供たちのボブおじさんのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
3.8
《両親を告訴する。僕を産んだ罪で。》

わずか12歳で裁判を起こしたゼイン。
訴えた相手は、自分の両親だった!

3年間に及ぶ綿密なリサーチで中東の貧困と移民の問題を圧倒的なリアリティで描いたヒューマンドラマ!
第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。

中東のスラム街で生まれ育ったゼインは、自分の誕生日もわからない。
そもそも彼には戸籍がない為、法的には存在すらしていない。

幼少期から路上で物を売るなど朝から晩まで両親に働かされる日々。学校にも通えない彼は、唯一の支えだった大切な妹が11歳で無理やり結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出す。

日本では想像が出来ない中東の貧困と移民問題。特にそのしわ寄せは、無力な子供たちに容赦なく襲い掛かる。

本作は、監督が実際に目撃し経験した事を盛り込んだフィクションだが、その圧倒的なリアリティでドキュメンタリーを見ている様な錯覚に陥る。

劇中ゼインの母親が、訴えてきた弁護士に「あなたは私のような状況に置かれたことがないから、そういうことが言えるんです。あなたは子供に水と砂糖しか与えられないような生活をしたことがないでしょう?」と言うシーンは、まるで自分に言われてるように感じ、問題の根深さについて考えさせられる。

果たして悪いのは、この両親たちだけなのだろうか?
何もできない自分にもゼインの澄んだ目が訴えかけてくる。

2020年2月劇場にて鑑賞した作品を動画配信で再視聴。