竹野康治郎

存在のない子供たちの竹野康治郎のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.0
衝撃的な映画作品でした。この作品はアカデミー賞外国語映画賞をはじめ、カンヌ国際映画祭やゴールデングローブ賞など多くの受賞やノミネートがされた映画です。

中東における育児放棄や貧困問題をはじめとする不法滞在、移民問題などを主役のゼインを通して、「現実的」に描いているフィクションになります。監督は3年のリサーチ期間と6ヶ月に渡る撮影期間を持ってして作り上げたと話しています。出演している役者はほぼ素人ですが、映画の中と同じ環境を歩んできた方々を起用していることで、演技?という枠組みを超えているように感じました。とにかく抱えている問題が複雑すぎて、言葉を失うような作品でした。

映画としては全体の構成が素晴らしいです。ドキュメンタリー的に物語を追っていくものの、子供の立場、親の立場、不法滞在の立場など様々な境遇にある人物の「苦悩と葛藤」を積み上げていきます。ドキュメンタリータッチの合間に、裁判所の本音を織り込むことで闇深さを感じることができ、それが強烈な重みを生み出しています。そして最後にゼインが放った言葉が全てをなぎ払っていきます。しかし、これは我々にも通ずる訴えであり、目を逸らしたくなるような現実と訴えに胸が締め付けられました。

映画にはエンターテイメント的なものもあれば、国際問題を切り取るものもあります。映画の深さを知ることが出来る作品となっています。このインパクトを是非とも映画館で感じてみてはいかがでしょうか?


2019年公開作品 73本目
竹野康治郎

竹野康治郎