佳子

存在のない子供たちの佳子のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
2019年劇場鑑賞8本目。

節目の500レビュー目なので、今日は映画館へ行ってきました。
凄く観たかったのですが、上映してる映画館全国でも10に満たなかったので、ほとんど諦めてましたが先週末からなんと神戸でも公開‼️
有り難うシネリーブルT^T流石です。

画面に映し出される現実に、圧倒されました。
エンドロールが流れている間も強い感情に揺さぶられ、動けず涙が止まらなかった。

登場人物はみな自分の役どころと同じような過酷な環境を生きてきて、キャスティングディレクターに見出された人達。不法就労で、必死に息子を育てている若き母ラヒル役の彼女は生まれた年すら分からない不法就労の女性で、映画の撮影中に実際に逮捕されている。素晴らしい笑顔と強い生命力を溢れさせていた赤ん坊ヨナス役の子はこの映画後国外退去させられた。
ゼイン役の少年は、シリアからレバノンに家族で逃げてきた難民。学校にもいかず10歳の時から、スーパーの配達などの仕事をして家計を支えてきたそうだ。彼自身の名前を辛うじて書くことができる程度の学力しか持たない少年である。これまでの栄養状態を表すかのように体は非常に小さく9歳から10歳くらいにみえる。が、眼が違う。子供の眼ではない。そこに子供ならあるはずの無邪気な輝きはない。それは、演技ではなく間違いなく彼自身の人生を映しているのである。癌病棟で闘病している子供たちと重なるものを感じる。過酷でどうしようもない現実が彼らに子供でいることを許さなかったのだろう。

収入もないのに子供をたくさん産み困窮し、教育も与えず、働かせ、嫁がせ、殴りつけ暴言を投げつける両親は愚かだけれど、でもその苦しみもきちんと描いている。監督は女性で、親を告発するゼインの弁護士役なのだが、ゼインの母が彼女に自分の苦しみを法廷でぶつけるシーンがある。
「私たちがどんな暮らしをしているのか分かっているのか。あんたなら首を吊ってるよ。」と。
その時の彼女の母を眺める眼差しが凄く印象的だった。嫌悪感ではなく、悲しみが色濃く映されているのだ。

恵まれた環境に生まれ育った私に、どうしても変えることのできない地獄のような貧困や苦しみを抱えるあの両親を憎み、非難する資格が本当にあるのだろうか?と考えさせられた。

基本的な権利が与えられず、教育や愛すら受けることができない世界中の全ての人たちの為に撮られた映画なのだと思う。

観ていて苦しかったですが、本当に観てよかったです。
佳子

佳子