リュカ

存在のない子供たちのリュカのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
5.0
一番の印象は、
人生に疲れ果てた主人公の瞳の表情で。
もうそれだけで、苦しくなるのに。

「誰も知らない」をワールドワイドにし、
法廷シーンが入ることで
より社会的メッセージが強まった。
キャスティングも見事で真に迫る演技、
ドキュメンタリーのように自然だが
フィクションである。
監督が母親という立場だが、
子どもの視点で
ブレることなく描かれているのも秀逸。
ざらついた暑い感じが伝わる撮影、
光や温度まで感じる。
重い空気感の中、
絶妙な匙加減でユーモアが挟まれる。

主人公のピュアでいて到達した人格は、
そうさせられる何かの賜物。
めちゃくちゃカッコいいけど、
奪われた子どもらしい子ども時代が
悲し過ぎた。

妹の存在は魂を分け合った
自分の一部であり、
別離と喪失がこんなに尚早に訪れるなんて。
それでも生きる力、その瞳で、
それでも変えたくて知ってもらいたくて。
遠い国の環境も社会情勢も全く違うが、
法廷シーンでの主人公の言葉に
共感する子どもたち
(成人した子どもたち含む)、
愕然とした親たちは世界中に相当いると思う。

肉体を持って生まれた私たちに
ありあまる共通項が詰まった、
知らなかったこと
見ないフリすることは出来ない
魂の傑作。
リュカ

リュカ