しずる

アメリカン・アニマルズのしずるのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.8
レビューなどから、もっと癖の強い作品かと思ったが、想像よりは見易かった。

どう生きればいいのか解らなくなったり、社会や人生の閉塞感、平凡や常識への反発、家族を大切に思いながらも抱く鬱屈、変化を待ち望みながら反面恐れる感覚などは、多くの人が多少は共感を持てるのではないだろうか。
4人が皆、生まれも環境も人格も、特別に異常な訳ではなく、ごく普通であるのが恐い。

堅実に生きるか、野心を抱いて挑戦するか、夢を追うか、自由を求めるか。
たかだか100年程度の、誰も肩代わりできない人生。代償を自分で支払う限りは、どう生きるかの選択は自由にすればいいと思うが、それが他者を損なうものになった時、社会が、法が、良心が、破滅をもたらす。
教育や親や周囲は、知識としての【罪】を口を酸っぱくして語るだろうが、その境を本当に見極めて、行動を選択できるのは自分だけ。
考えの甘さが選択を誤らせた。もっと上手くやれると。誰も傷付けずに。そしてきっと、成功の暁には、達成感に溢れて最高な気分になると思った。
結果得たのは、罪悪感と後悔と絶望とすり減るような恐怖。
例え社会に断罪されなくとも、その後の人生は、心の幸福や平穏を代償に支払うものとなっただろう。

冒頭の上下逆さまの気色(非日常を求める心の象徴だろうか)、再現映像のようなドラマと、そこに挟まる当事者達のインタビュー、その食い違いによってリアルタイムに変化する映像内容など、表現や演出の手法が斬新。
4人の中でも、記憶や主観が食い違っているのも、真実ってそういうものよね、と実感できて面白い。
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