しずる

家なき子 希望の歌声のしずるのネタバレレビュー・内容・結末

家なき子 希望の歌声(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

遥か昔に見たアニメの微かな記憶しかなかったので、一応ウェブであらすじなど辿ってみた。だいぶん変更、簡略化されているようだったが、どうやら原作は、主人公の身の上が二転三転、長く複雑な物語。限られた時間に全てを盛り込もうとすれば、しっちゃかめっちゃかで終わってしまうのは必定。一本の映画作品としては、解りやすく、子供にも見やすく、上手く纏めてあると思う。

主人公レミは、実は拾われ子で、経済的理由で、動物使いの旅芸人に預けられる。親方や動物達と次第に心を通わせ、歌の才能を開花させ、やがて本当の親に繋がる手掛かりに巡り合う。

年老いたレミの回想として語られる、彷徨の物語の主人公は確かにレミだが、その裏で、同程度の重みで語られていくのが、旅芸人ビタリスの人生だ。
かつて高名なヴァイオリニストだったビタリスは、もてはやされ、音楽にかまけて家族を顧みなかったばかりに、妻と子供を喪っていた。その罪滅ぼしとでもいうように、ビタリスはレミに愛情を注ぐ。二度と弾かないと誓ったヴァイオリンを披露して金を稼ぎ、悪漢に拐われたレミを助け出し、吹雪と寒さから守ろうと抱き締めたまま、自らは命を落とす。

この物語は、ビタリスの贖罪の物語でもあり、多分にキリスト教的宗教色を帯びている。それが、『フランダースの犬』や『幸福の王子』と同じような、若干のやるせなさ、気持ちの置き所の無さを感じさせるのだが、最後に、物語はレミの人生に、きちんと幸福と意義を用意してくれている。
悲しくもほっと優しいこんなお話は、寒い季節に、温かい飲み物を傍らに鑑賞したい。
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