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アメリカン・アニマルズのgnspのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.0
「何者か」になりたかった若者たちのささやかな、しかしあまりにも稚拙な足掻き。


冒頭に「事実に基づいたのではない、事実だ」と宣言する通り、全編に渡ってドキュメンタリーチック。でありながらも4人以外の視点を映さないことで、「冒険」を映画的に盛り上げていた。

なにか決定的なものに巡り合った瞬間から、人はそれに魅せられていく。「恋」かもしれないし、「ファン」かもしれない。そしてそれをどうしていくか、「憧れ」として眺め続けるか、我がモノにしようとするのか。
何れにせよ周りを見えなくする魔力を持つことに変わりない。
そこで踏みとどまるのか、はたまた一線超えてしまうのか。何のために動くのか。精一杯だが稚拙で身勝手な足掻き、誰もが一度は通ったに違いない。
だから画面の向こうとこちら側の「彼ら」に共感性羞恥を抱く人は多いと思う。

「何者か」になれる道だけは遥かに広がったこのご時世だからこそ、この「事実」を知っておくべきだなと。

しかしこのことを映画として残すことによって彼らは「何者か」になることができた、あるいは仕立て上げてしまったのではないだろうかと少し立ち止まる気持ちも。

バリー・コーガンの絶妙なイケてなさは今作でも存分に発揮されてるし、やはり重要なとこでスパゲティ。
一方ウォーレンの井の中のイッちゃってる奴感!たまらなく気持ち分かるんで抱きしめてやりたい。
本人たちへの演技指導は流石ドキュメンタリーやってる監督って感じなのかな。俳優と遜色なかった。

計画の間は名作ケイパーものへの目配せも入れたりしてなかなか楽しかったし、まさに「生きがい」を謳歌する青春モノ!な側面もありつつだったんだが、いざやるってなってからのハラハラ感とどうしようもなさ。どっちにしろ形の違う「閉塞感」に支配されてしまっていたのか。

あと音楽使いも良くって、楽曲周りは辺は青春モノの濃度高めだなーと、一方劇伴はケイパーって感じでバランスだったか。


だがしかし、これは彼らの「青春の1ページ」としては到底片付けられない、罪深き「事実」でしかない。
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