42car

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話の42carのレビュー・感想・評価

4.0
『自立生活』を送る、超がつく程のワガママな筋ジストロフィー(筋萎縮や筋力低下が進行していく病気)の鹿野とその生活を支援するボランティアの人たちの織りなす日常(?)とは、、。

この映画、なにが凄いって導入の演出が上手すぎて、そのまま物語にのめり込んだ勢いで2時間が過ぎるんです。
主人公のみさきちゃんが彼氏のボランティア先に押し掛けるところから物語は始まるんですが、その時の鹿野はホントに嫌悪感を抱く様な傍若無人振りなんで、5〜6人のボランティアを顎でこき使い、感謝の言葉どころか暴言を吐く。その状況を当然のごとく受け入れ、甘やかす様な言葉を吐くボランティア。その異様な光景に主人公が唖然となるのですが、観てる自分はそれ以上に本当に気持ち悪いと感じました。「これ、生理的にダメなタイプの映画かも知れない」と思いながらそこから10分ほど観ると、一転、気持ちがボランティア側になるんです。
冒頭シーンは多少オーバーに描かれてますが、鹿野とボランティアにとって、この関係性が自然なんだと分かり始めるのです。この後、我々に待っているのは製作陣の掌の上を転がり続けるだけです。ええ。泣けて笑える素晴らしい映画でした。

もう一点、気に入った理由として、障害者を取り巻く社会問題を説教臭く警鐘するのではなく、観ている側が自然と問題提起したくなる作りになってることです。
福祉国家として、障害者への援助はどこまで必要なのか。経済的保障を行うに留める?当然にボランティアが集まる社会を目指す?
障害者を身内に持つ家族は、 介護を第一に生きる宿命となり、自分自身の人生を歩む資格はなくなってしまうのか。
筋ジストロフィーに罹ることはなくとも、交通事故で半身麻痺になる可能性は誰にでもあります。そうなった時、果たして両親や家族が、あらゆる日常を押しのけて自分の介護にあたらなければならない社会でいいのか。
この映画はこんなことを考えるキッカケを与えてくれます。
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