とうじ

モンパルナスの灯のとうじのレビュー・感想・評価

モンパルナスの灯(1958年製作の映画)
4.0
芸術家が死後評価される場合における、不思議な理不尽さと残酷さを体現する象徴として画商が出てくるのが良かった。あの記号的な存在と現実味のある人物のちょうど狭間みたいな立ち位置のキャラクターは見たことがなく、新鮮だった。その不思議さを拡張する本作のラストは切ない人情味がある暖かい軸と、記号的な象徴としての冷たい軸が両立している、凄まじいものであった。そのどちらを中心に捉えるかは、本作を愛の物語として捉えるか、もしくは芸術の物語として捉えるか変わり、その二つは水と油のはずなのに、本作はそれを魔法のように混ぜ合わせたものとして進んでいく。泥酔したモディリアーニとジャンヌが波止場の淵で話す場面は非常に色っぽく、カラックスが「ポンヌフの恋人」で盗んだ気持ちがよくわかる。カメラワークや演出も堅実で、ベッケルの他の作品にも興味が湧いた。
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