ボブおじさん

天国でまた会おうのボブおじさんのレビュー・感想・評価

天国でまた会おう(2017年製作の映画)
4.1
抜群に面白いのに、日本ではあまり知られていない隠れた名作。原作はピエール・ルメートルによるフランスのベストセラー小説。そのスケールの大きさから映像化は不可能と思われていたこの傑作小説を作者自らが脚本を担当して映画化。

監督は本作でも準主役を務める個性派俳優のアルベール・デュポンテル。冒頭の目を覆うようなリアルな戦闘描写からアーティスティックで幻想的な世界へと美しい映像で誘ってくれる。第1次世界大戦後のパリを描く撮影・美術・衣装・音楽とも隙がない。2018年のセザール賞では監督賞など5冠に輝いた。

1918年、第1次世界大戦の終結間近い西部戦線。上官の悪事に気付いたため、塹壕で危うく生き埋めにされそうになったフランス兵のアルベールは、味方の兵士エドゥアールに救い出され、九死に一生を得る。しかしその際、エドゥアールは砲弾を浴び、顔の半分を失う重傷を負ってしまう。

休戦後、2人はパリに戻るが、戦没者がたたえられる一方で、帰還兵に対して世間は冷たく当たり、つらい想いを味わうことに。戦争で何もかも失った2人が国を相手に大胆な犯罪計画を企てる様子をスリリングなタッチで描く犯罪ドラマ。

戦争というのは、権力者が貧しい者、力のない者に命じて殺し合いをさせること。いつの時代もエドゥアールやアルベールのような弱い人間が犠牲になり、富や地位のある者が幅をきかせる。ここで描かれていることは、現代でも何ら変わってはいない。

〝戦争は終戦を迎えても終わらない〟という当たり前のことを思い知らされる。死んだ者はもちろんだが、生き残った者も犠牲者だ。過去の戦争にまつわる悲劇を題材に、今を生きる我々に問いかける反戦映画であり、芸術的映画であり、第一級のエンターテイメント映画である。


公開時に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。