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恋をしましょうのScriabinのレビュー・感想・評価

恋をしましょう(1960年製作の映画)
4.2
ジャケ写と二つの有名ナンバーから、もっと退廃的で楽しげな話なのかと思ってたら、結構じりじりしたドラマだった。というかこういうのは身に覚えがあってかなり鬱。普通に考えてみればやばい社長の迷惑案件に他ならないのだけど、パフォーマンスに惹かれながら圧倒的に才能がないという点に限りなく共感してしまうので、イヴモンタン以外全キャラが疎ましかった(2回くらい、鶏のダンスをさせられる夢とか見たし)。そもそも人に何かを見せようだとか、人に喜んでもらおうだとか、そういう気持ちが希薄なんだと思う。それでもやりたい、やらなければと思うから大変なんだ。そこら辺マリリンは楽観的に捉えていたな。「努力しなければ欲しいものは手に入らない」。なんかサッチャーみたいで鼻につくけど元気だから良しとする。

ところでとても気になるのは、マリリン主演の映画はこういうバックステージものが多いこと。これと『ショウほど素敵な商売はない』では結構本格的な舞台に出る役者として、『紳士は金髪がお好き』や『お熱いのがお好き』『コーラスの女たち』では歌がメインのパフォーマーとして描かれている。そしてたいてい「おバカなブロンドとして邪な視線を向けられながらも、逆にそれを利用して欲しいものを手に入れる強かな女性」という描き方になる。それが現実のマリリンと重なるのはまだいい。ただ、映画とは裏腹に、現実のマリリンは欲しいものを手に入れられず、現実の男たちはしっぺ返しを受けなかったのではないかという疑問がよぎって居心地が悪くなる。マリリンが好きというのは、痛めつけられても屈しない(が、現実には屈しているのかもしれない)女性を見るのが好きだというのと同義なのかもしれない。そうしてみると、フィクションはやはり道徳的メッセージを含むものなのだと確認できる。『荒馬と女』『帰らざる河』も見て、ショウガール・マリリンのイメージを変えたい。

・最初と最後にシネマスコープを使っている。
・放射能アクセサリーという発想はこの時代らしい。
・ジェロームの絵が一瞬だけ出てくるの最高!!
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