U子

沖縄スパイ戦史のU子のレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
4.0
すごかった。
こんなことがあったとは全く知らなかった。
昔「あの島に行きたい」という韓国映画をみて、衝撃だったが、日本でもこんなことがあったのだ。

前半は少年たちのスパイ護郷隊のことが語られる。幼い彼らを戦争の道具にし、従わせる。守るべき者たちが守られず、
何のために戦争をしているのだろうと
現代に生きていると思えるが、
その当時、その場にいた人たちにはそんなことを考えることすらできなかったのだろう。
友の手だけを遺骨と言って持って歩く少年。
死の淵をさまよい、帰ってきて30年以上
心を患った元少年護郷隊。
そして、歩けなくなったものは、命があっても隊長に殺された。
精神に異常を来し、隊長に殺された少年。
母は帰ってくることを信じていたのに、
骨になって帰ってきたとき、髑髏を持って泣き崩れ、そのあとからおかしくなってしまう。その弟も最近になって、兄の死が敵によるものではなく、隊長の手によるものだったと知る。
母は兄の死後、おかしくなり、寝たきりになる。兄の死よりも、母に元気になってほしかったという言葉が突き刺さる。

後半は、波照間島の悲劇が語られる。
波照間にやってきた山下虎雄という男によって、島民は三分の一かマラリアで命を落とす。教師としてやってきたのに、実は陸軍中野学校を卒業した軍人であった。軍の食料確保と、情報漏洩を阻止するために、西表島に疎開させた。戦後、山下虎雄に電話をかけている音声があったが、あの時は仕方なかったと笑い声も漏らしつつ語るのには驚いた。

そして、最後に一番の闇が語られる。
島民が島民をスパイ密告し、日本軍が民間人を殺していたというものだ。軍は国民同士にお互いをら見張らせていた。
本当に地獄のようなことが沖縄であったのだ。敵に殺されるのではなく、同じ日本人に殺される。
沖縄は本土決戦に向けての、実験のような場になっていた。もし戦争が終わらなければ、同じことが本土で起こっていた。
今、沖縄の八重山諸島に自衛隊が配備される。そのことについても、元レンジャーの隊員が自衛隊は基地を守るけど、国民は守らないと語る。何も変わってないことにまた驚く。沖縄はどこまでいつまで犠牲になるのだろう。有事があったときに、初めて気づいては遅い。
監督の声が聞き覚えあるなあと思ったらMBSのアナウンサーだった人だった。いまはこんな作品を監督していたのだなあ。
監督の過去の作品も是非みてみたい。
いろんなことが衝撃で書きすぎてしまったけど、みてよかった。
U子

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