名倉

アラジンの名倉のレビュー・感想・評価

アラジン(2019年製作の映画)
4.3

冒頭からアラジンの世界観にどっぷりハマってしまい、改めてディズニー映画の凄さを見せつけられました...

アニメオリジナル版では、王宮に閉じ込められ外の世界に出られず自由な恋愛に憧れを抱くジャスミンが今作では、王族初の女性の王を目指す為に男女間の偏見に異論を唱えるキャラ設定になっており時代に合わせたアレンジがまずとても良かったです。彼女の頼り甲斐のあるしっかりした性格はむしろアラジン以上に今作の主人公として相応しいキャラクターの様に思います。王宮からジャスミンを救い出すアラジンではなく、貧困から抜けられないアラジンを救い出すジャスミンという今までのオリジナルに反旗を翻す様な展開は胸が熱くなる展開で凄く新鮮で楽しめました。

そしてウィルスミス演じるランプの精霊ジーニー🧞‍♂️はオリジナル版のジーニーに負けず劣らず最高にキャラが立っており、ミュージカルシーンでは彼に合わせてか、今風にリメイクされたHIP HOP要素も追加され、是非とも映画館で観たい!と思わせる演出がたくさん施されています。中でも特に「Friend like me」は、洞窟の中で繰り広げられるジーニーワールドが炸裂しており、あのドタバタ感はアニメ版の時から健在で楽しみながらも懐かしさで思わず涙が出そうなほどでした。決してアニメ版のジーニーの劣化版なんかではなく追加されたオリジナリティも含め、アニメ版のジーニーには無い優しさや人情味を感じたのは、間違いなくウィルスミスの人柄や彼が持つ本来の素質で、実写版によりアップデートされています。

しかしオリジナル版との違いで一番良いなと思ったのは、ジャスミンの側近として登場したダリアという新キャラクターの存在です。世話好きでジャスミンと良き親友という立ち位置でいながら、ジーニーと恋仲になっていくというオリジナルな展開も今作ならではで非常に見応えがあります。ちょっと抜けている性格ながらもジャスミンの為に空気を読み、わざとアラジンやジーニーの存在に気付かないフリをしてくれたりと気の利いた立ち回りをする彼女の役所は、こういった映画では欠かせない存在だと思います。アラジンとジャスミンの恋の行方とジーニーとダリアの恋の行方が両方楽しめる一度で二度美味しいお得な映画だと思います。

ただ何点か気になった点を挙げるとすれば、まずアブーやラジャーが可愛くなかったことです。むしろ恐怖感すら感じました。アニメ版ではアブーやラジャーには可愛らしさや愛嬌、親しみやすさがあったのですが、実写版はリアリティとグロテスクさがあったからです。逆に魔法の絨毯はリアリティが増した事により、よりキャラ立ちがはっきりし、本物の絨毯“なのに”動いてる!というファンタジーさがプラスに働いている様に感じました。魔法の絨毯やイアーゴに感じなかった違和感は、このアニメ版との可愛らしさのギャップがあったからなんだと思いました。

もう一つ気になった点を挙げるなら、ジャファーがジャファーっぽくなかったということです。まず見た目や憎たらしさがあまり悪役っぽくなかったと思いました。もっと年配で、いかにもザ悪党!みたいなキャストだともっと良かったかなと思いました。しかも意外とあっさり敗れてしまったので、戦闘シーンだけで言えば少し物足りなさも感じましたが、イアーゴがモンスター映画として見所を作ってくれていたので、それはそれで面白かったです。

主人公アラジンもアニメ版よりずっとイケメンで、「ちょっとアラジンの割にカッコ良すぎないか!?」と思いましたが、演技もアクションもダンスも素晴らしかったです。アラジンっぽい少し生意気な雰囲気もしっかり出ており、彼以外にはなかなか演じきれる役ではないような気もしました。

役者もスタッフも監督も全てがマッチングした今作は、自分が想像していた以上の「アラジン」に仕上がっていて本当にそれが嬉しくまた、素晴らしかったです。文句無しの名作です。
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