テルヒサ

天使のたまごのテルヒサのレビュー・感想・評価

天使のたまご(1985年製作の映画)
4.7
押井守監督伝説のOVA、少女と兵士と奇妙な卵と奇妙な世界。
モノローグも会話も最小限しかなく、固定されたアングルで少女の行動や沈みゆく街、兵士との関わりが独特なタッチで淡々と続いていく。確かに眠くはなるのだが、これは何を意味するのだろう?このカットからわかるこの世界はどんな所だろう?卵の中身は?などと観客側が考えることで味わいがでる作品。
逆にこの物語、世界観、設定、演出を選択してこだわり抜いて作った意匠に敬服したくなる、独特で濃厚なアニメーション。
ラストの方舟の形を見て初めて、キリスト的世界観、それに準えたシーンのもつ意味、深さを理解した。この構成はすごいし異常。
冒頭のシーン、聖像があしらわれた球体が水面から浮上するシーンの雰囲気は唯一無二。ディストピアでもあり、宗教画のようでもあり、とにかく印象的。
髪の毛の表現が異常に細かく、絵画的で目を引くものがあった。『君たちはどう生きるか』にも影響を与えたらしく、確かにと納得した。
押井監督の水、水面を活かした鏡面みたいな演出が大好き。神秘的で、少し怖い。
これくらい世界観や画面にこだわったアニメーションをもっと見たいし作ってみたい。
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