もちや

パス・オーバーのもちやのネタバレレビュー・内容・結末

パス・オーバー(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

場面が固定で、演劇を映画として編集されたものを観るというスタイルです。

黒人2人組モーセとキッチはいつかまだ見ぬ「ここではないどこか」へと行くことを夢見ており、それをパスオーバーと言います。ユダヤ人の出エジプトになぞらえているようです。
しかし、現実は警察が黒人に暴力を振るっており、2人は銃声にビクビクしながらどうにか生きている状態です。

①警察はキッチとモーセを殺せなかったこと
②なぜ善良そうな白人はモーセを撃ち殺したか?
について考えたことを書きます。


黒人2人組は、途中、「ここではないどこか」へ行くという意味でのパスオーバーではなく、死んでここから解放されようというパスオーバーに転換します。
つまり、今生きるも死ぬも選べない人生だから、いつかしたいように生きることができる場所に行くのではなく、せめていつどう死ぬかを選ぼうじゃないかとなったのです。
そこで警官が現れたとき、キッチとモーセが警官に「殺してみろよ!」と言うと、警官は2人を撃ち殺そうとするのですが銃を撃てなくなります。
警官は、今まで黒人を生かすも殺すも自分の思いのままと思っていたのですが、キッチらが「殺してみろよ!」と言ったことで、ここで警官が彼らを殺すと彼らの願いを叶えてしまうことになるからです。
(絶対的な力関係だと思っていたものが、結果的には揺らいでしまう。)


彼らは警官に勝ったことを喜びます。つかの間、映画前半に登場した善良そうな白人にモーセが撃ち殺されて、この映画は終わります。
なぜモーセを殺したのでしょう?
彼は今の状態が変化するのが嫌だったのではないでしょうか。
彼は今の状態に満足していて、黒人2人組が変化したことで、間接的に自分の状態が変わることを嫌がったのではないかなぁと思いました。「全て私のものだ!」って言ってるしね。
善良そうに見えるけど、自分をいわゆる上位の人間だと認識していて、それに満足しているから奪うことはしないけど、奪われることに過激に反応したのではないでしょうか。
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