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初恋のodyssのレビュー・感想・評価

初恋(2006年製作の映画)
3.7
【無理目なところもあるが、時代の雰囲気を再現した佳作】

中原みすずの小説をもとに、塙幸成が脚本を作り監督した映画。 

1968年の三億円強奪事件が、実は18歳の女子高校生(宮崎あおい)によってなされた、という奇想天外な物語が、学生運動や反体制文化の色が濃厚だった時代背景を丹念に描きながら語られる。 

鬱屈しながら、ジャズやフランス現代小説やデモにのめりこんでいく若者たち。その中で、両親に捨てられて叔父夫婦に育てられたヒロインは、東大生と知り合って或る計画を打ち明けられる・・・。 

宮崎あおいが三億円強奪犯という設定は、どう見ても無理筋だが――白バイに乗るには体が小さいしね――先進国で一様に反体制運動が盛り上がった1968年という年にこの事件が起こっていることの意味を、改めて考えさせられた。

時代考証も、完璧とは言いかねるが、わりによくできているし、あの頃の若者たちが訳もなく抱いていた悲痛な情念のようなものが映像からよく伝わってくる。 

佳作と言える。
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