かつて学生運動に参加していた経験のある高橋伴明監督の思いが、本編の学生運動に挫折して怠惰な人生を過ごす下元史朗のキャラクターに込められているように丁寧に描写され過ぎてややドラマが重くなっている印象があるものの、それでもそんな生きる気力を失った男が故郷や家族の惨状と向き合ったことをきっかけに再び権力や国家とインモラルな手段で戦う姿には演じる下元の熱演も相まって凄まじい気迫があり心を揺さぶられた。
主役でスキンヘッド姿の下元史朗もさることながら、汚染された魚を食べて発狂した妹を演じる山地美貴の体当たりな熱演も目を見張る。この二人の熱演はポルノであるはずのピンク映画の範疇を超えており、だからこそあのラストが成立したともいえる。
ピンク映画ゆえの低予算が寂れた漁村のうらぶれた雰囲気によく合っている、エロシーンも興奮というより生々しすぎて行き場のない登場人物の心境が画面からにじみ出ている。
主人公の部屋にある本棚に並ぶ本がいかにも60年代後半から70年代前半に学生らしいラインナップ。
60年代学生運動と連結したピンク映画を作ってきた若松孝二監督作品の後継的な作品ともいえる一本。