えいこ

記者たち~衝撃と畏怖の真実~のえいこのレビュー・感想・評価

3.8
真実を伝えるという使命に真摯に向き合う記者たちの物語。アメリカがイラク戦争に踏み込む経緯が、通信社ナイト・リッダーの記者たちの取材を軸に描かれる。

情報の真偽やスクープの奪取、圧力や脅迫などのスリルや緊迫感はあまり描かれない。国外にいる私たちですら、この戦争の大義にかすかな疑念を感じていたように、政府内部でも危機感を感じる人々が容易に情報源となったのかも。なのに結論を〝偽〟の事実で裏づけて動いていく政府、プロパガンダに成り下がるジャーナリズム。テロの後の感傷や愛国心を戦争に利用するやり口は定石なのかもしれない。

自分の子を戦場に送ることのない人間が戦争を始めて、その誤りの尻ぬぐいをするのは戦場の兵士たち。ナイト・リッダーは自分の子を戦場に送る国民とともにある、というジョンの言葉が沁みる。ジャーナリズムを描きながらも、若き兵士の家族の姿を傍に添えたのがロブ・ライナーらしさ。

世の中は当時よりもさらに酷くなっている。ジャーナリズムはもはや風前の灯。真実の在処を嗅ぎとる嗅覚、真っ当な人を見抜く眼力、当事者の思いや現場への想像力を自らが身につけなければならない。
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