いしやま

ヴァンサンへの手紙のいしやまのレビュー・感想・評価

ヴァンサンへの手紙(2015年製作の映画)
3.9
アイデンティティを巡る旅。
真のろう者から見ると、世界は聴・聾で二分化されていて、その視座を「後から」知った人間に大きな揺らぎを与える。
所詮は1つの障害、生きづらさに過ぎないのだけれど、それは確実に彼らを孤独にし、無力な存在たらしめる。
この物語を作り上げるために、家族でも研究者でもある必要はなくて、1人の個人として向き合ったことが非常に心に残った。
ドキュメンタリーとして、静かなろう者の怒りが滲み出していながらも、手話の美しさを表現しているところが素晴らしい。
一方で手話の独自性を押し出せば押し出すほど、その狭間の人間が苦しむという構図をろうあ運動は乗り越えられるだろうかという疑問は残る。
自分の中の「日本手話主義」を再認識すると共に次のステップに進む必要性を感じさせた。
いしやま

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