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魂のゆくえのKのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
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傑作。これは傑作だ。映画をその雰囲気の良し悪しだけで論じる批評は好きじゃないが、それにしてもこの作品の雰囲気は自分好みすぎた。冒頭5分の展開で、ベルイマンの「冬の光」から明らかなインスパイアを受けていて、牧師の苦悩を描いた作品なのだろうと察したが、その洗練のされようは想像の遥か上を行くものであった。現実の地続きのような世界線で展開されるストーリーの中で、超自然的、または非現実的なものを使って「希望」や「絶望」を表現する作品は、「映画」というエンタメとしての枠組みでも捉えられる芸術の在り方として一番相応しいのではないかと考えるが、この作品はその塩梅があまりにも絶妙で本当に圧倒された。教会に足を運ぶ人々は、牧師の方の存在に何故か安堵し、何かあったら相談すればいい、そうしたら何か安全で安心できる答えが返ってくるなどと、無意識的に思ってしまうこともあるかもしれない。しかし教壇に立って説教をする牧師もまた、我々と同じ人間であり、葛藤や苦悩と戦っている。イーサンホークの演技はポールシュレイダーの言うところの「スピリチュアルな映画」を完成させるための大切な最後のピースとなり、違う人物だとこの自然な表情の硬さや、息の詰まるような表現はできていなかったかもしれない。言葉にすると長くなってしまうが、とにかく観なければいけない。この作品が訴えかけるものは言葉で説明がつかない、それ以上のものであった。
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