daisukeooka

search/サーチのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
5.0
PC画面で全てが展開する映画。PCがサスペンスを生む仕掛けになっているわけではない。サスペンスを生んでいるのは間違いなくPCやスマホを日常的に使いこなし、家族よりも共にいる時間の長い存在としてしまっている「自分たちの経験」だ。
いざとなればスマホの中身など見られても構わない、とどれだけの人が思うだろうか。自分のスマホの中身を見られるのと、自分の大事な人間のスマホの中身を見るのと、どっちが怖いか。けっこう良い勝負ではないか。
父親デヴィッド(ジョン・チョー)娘マーゴ(ミシェル・ラー)の安否を突き止めるべく、彼女のPCの中を覗く。あーこんな手で娘のPCに中に入るのね、と思いつつ、自分もこうできるのか、自分もこうされるのか、という気づきとスリルが相まって、ふんふん感心しながら引き込まれる。
SNSの発達で「人間同士のつきあいが希薄化している」なんて年寄りが多くなったがそんなことは無い。PC画面を通じてSNS上の「友だち」の嘘くささが暴かれる一方で、親と子の間の気遣いや葛藤もまた際立つ。本名を使わないやりとりだからこそ本心を相手に見せることもできる。極めて現代的な仕掛けの中に、極めて普遍的な人間の感情を入れ込んでドライブしていて、作り手の誠意と実力は明らかだ。
「PC画面で展開する」というコンセプトと、劇中の事件とは、別個に立てて構想していったのか、それとも互いに絡みながら構想していったのか、すごく気になる。事件の有り様もなかなか渋い。PC画面中に伏線を巧みに張り巡らせ、デヴィッドが真相にたどり着く瞬間に「それだ!」と観る側に伏線に気づかせるカタルシス。まあナメずにとにかく観るべし。
希有壮大な空想でなく、乾燥気味な日常でなく、日常を少しだけ逸脱するようなこれくらいのスケールのエンタメ映画。日本でももっと作られれば良いのにな。
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