JoeyOgawa

search/サーチのJoeyOgawaのレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
4.9
確かに『SAW』や『オープン・ウォーター』、『プライマー』、『ハード・キャンディ』、『フローズン・リバー』を世に送り出したサンダンス映画祭で話題になっただけのことはあり、斬新かつ優れたソリッド・シチュエーション・スリラー!!

全編パソコンの画面上で展開され、パソコンのSNS、Skype、YouTube、キャスト、パソコンを通したテレビ映像など全てパソコンの映像で構成されている。サスペンス映画の見せ方としては、電話でのやり取りを中心に構成した『フォーン・ブース』や『セルラー』のパソコン画面版と言った趣。電話やテレビのニュースもパソコン画面からという徹底ぶりで、こうした意味でも『キューブ』や『SAW』、『セルラー』と同じくくりのソリッド・シチュエーション・スリラーとはするがこれらと違うのはほとんどのソリッド・シチュエーション・スリラーが相手からの監禁ややむにやまれぬ状況に追い込まれたシチュエーションなのに対し、本作はパソコン中毒の主人公というのが大きい。強いて言えば撮り手による制限という意味ではPOV作品に近い感じではある。

シチュエーションだけではなくサスペンスのひねり方としても一級品。SNSやチャットからや、捜査中に出た品物から何人か犯人候補が出て「あ、こういう方向で行くかな?」と思わせつつも意外な方向から真相が出てくる。そのやり方に関しては詳しくは書けないが、まるでSNS経由の詐欺のような手口で見ていたボクもうっかり騙された感じである。

さらに、デヴィッドとマーゴット他、デヴィッドの弟など親子・親戚との「父と娘」、「兄弟」のドラマとしても秀逸。妻の死を基点とした父娘の仲の揺らぎや、弟の行動にも注目。デヴィッドが元々パソコンが得意だから色々パソコン上でスムーズに進むのがあるが、警察が犯人像や捜査方針をあげながらもそれとは違う方向から探って、真相に近づくのは「ネットに精通」というポテンシャルよりも「娘LOVE」から来る父親の火事場の馬鹿力的な精神面からの執念が感じられ、これがストーリーを面白い方向に持っていっている。


ただ、全てパソコン画面からの映像で展開するので、斬新さがありつつも通常の映画とは違うフォルムではあるので、慣れないうちは若干イライラがある。が、そこは慣れる以外ない。

映画の映像としてはブライアン・デ・パルマの映画で見られるようなスクリプトの使い方やアップの切り返しの多様、POV、逆POV、隠し撮り生ビデオ撮影など、あらゆる撮影方法を使っている。3台のiPhone5で撮影した『タンジェリン』や同じくスマホから撮影した『フロリダ・プロジェクト』、POVの『ブレアウィッチ・プロジェクト』、FPSをアクションで使用した『ハードコア』や『悪女』、ゲーム目線の『レディ・プレイヤー1』など、こうした類の作品と比べると面白い。
 

斬新なシチュエーションと撮影とサスペンス映画としての入り込んだ展開から単に新感覚のサスペンス映画というよりは、しっかりとしたサスペンス要素を持つ優れたソリッド・シチュエーション・スリラー!
JoeyOgawa

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