この作品が“人の記憶”をどう取り扱おうとしているかのスタンス表明を読み取ったあとは、何の心配もなく作品の流れに身を委ねることができた。作中作として採用されたケン・リュウ『母の記憶に』を含め“母と娘”というモチーフが重層的に用いられている。
『真実』と題された自伝本には虚構がある、という設定からこちらが勝手に思い描いてしまった「嘘のベールを一枚ずつ剥がしていった先に待っている“真実”」的なカタルシスを作り手は回避していると感じ、途中から見方を軌道修正。「“本心”という美談」には、かなり慎重な映画だった。