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真実のUのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.5
「真実」という「嘘」にまつわる物語。

女優の仕事をする母親。
脚本家の仕事をする娘。
母親と娘は、本当の気持ちを
表現という嘘を使って伝え合っていた。

映画やドラマといったフィクションは、
単なる嘘ではなく
女優でも脚本家でもない
個人個人の「真実」が
詰め込まれているもの
なのかもしれないと思った。
もちろん、この映画も含めて。

ドキュメンタリーを撮り、
フィクションをつくってきた是枝監督は、
どんな「真実」を詰め込んだのだろう。
役者の控え室での会話を
実際のシーンに入れ込んだり、
子役には台本を渡さずに
口頭でセリフを伝えるといったように
役者の人間的なリアルを
作品に投影してきた是枝監督。 

個人的な想像でしかないが、
様々な役者との出会いや
是枝作品の常連である
樹木希林さんの死を経て、
演じることを仕事にする人々の
信念や志や苦しみといった、
見えない「真実」を
描きたかったのではないだろうか。
だから、大女優カトリーヌ・ドヌーヴに
“大女優役”を演じてもらうことにしたのではないだろうか。
  
そして映画を思い返すと、
登場人物のなかで
嘘を1度もついていない人物は
誰もいなかったように思う。
登場人物全員が
決して主題から弾き出されていない。
これも、それぞれの役者への
リスペクトのように思える。
あらゆる発言や行動に
意味を発見できるところが
観ていて本当に楽しかった。

「真実」は、
ずっと終わらないでほしいと思うほど
素敵なフィクションだった。
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