是枝監督の家族の描き方は国境を越えた名俳優たちを相手にしても押されることなく光っていた。静かな会話劇の中でも名優達の流石の演技力でそれぞれの本心や関係性がひしひしと伝わり、それでいて誰にでも当てはまる様な普遍的なテーマを一貫して感じることができた。
不思議なもので、日本要素はどこにもないのに、是枝監督の手にかかると日本の家庭がチラついて見える。カトリーヌ・ドヌーヴは樹木希林に見えるし、イーサン・ホークは福山雅治×リリーフランキーな雰囲気を感じる。食卓での家族の描き方やラストの俯瞰構図なんかも是枝監督らしさが詰まってる。
ただ、会話劇もウィットに富んだ会話というよりは、皮肉屋のフランス人の痴話喧嘩をひたすらに聞かされる様な展開が多いので、思わずイーサン・ホークと同じように苦笑いをしたくなる。フランスの画的な街並みと穏やかな空気感は良かったものの、過去の是枝作品に比べると家族や視聴者の感覚を試すようなアクシデントが発生しなかった分、やや落ち着き過ぎたか。
誰にでもオススメできた「万引き家族」や「そして父になる」に比べると、万人受けはしなさそう。是枝監督の作品で無ければ、公開館は3分の1くらいだっただろうなぁ。
