ShinMakita

真実のShinMakitaのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
1.9
フランスの大女優ファビエンヌが自伝本「真実」を発表した。そのお祝いのため、疎遠になっていた一人娘のリュミールが夫ハンクと娘シャルロットを伴ってアメリカから帰郷する。最初は穏やかな母娘の再会の時を過ごしたが、リュミールが「真実」を読んで苛立ちを募らせてしまう。幼かったリュミールと過ごした昔のエピソードが嘘ばかりの綺麗事で、しかもリュミールにとってかけがえのない叔母だったサラについての言及が一切無かったからだ。それを指摘するリュミールだったが、ファビエンヌは悪びれもせず、新作映画のセリフ入れに余念がない…

是枝監督の新作「真実」。特別編集版も公開してますが、観たのは最初の封切り版。

以下、ネタバレ検定1級2級。


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フランスだし、母娘の話だし、しかもその2人が大女優と女優くずれという関係だしで、なかなか感情移入しづらい2人のドラマなのに…
きちんと感動できるのは、やはり是枝マジックなのでしょうか。自伝本では明かせない秘密があるとか、サラ叔母に何か謎の背景があるとか、そんなミステリアスな要素はありません。どちらかといえば、互いに距離を感じる母娘が新作映画のホン読みからアップまで乗り越えていくというバディピクチャーなんですね。んでその新作映画がSF母娘もので、ファビエンヌが「娘」を演じるという複雑なメタ構造も面白かったです。また、女優にとっては、演技している時こそがその人の(真実)なんだなとも思ったり。若いライバルを前にNGを出したり、感極まって名演を披露する場だったりで、ファビエンヌの素が透けて見えるんですよ。言い換えれば、日常生活送っているときのファビエンヌの言動が極めて雑(笑)。嘘ばっかり言って本音を出さないし、ほんとにオズの魔法使いを見たのかどうかだって怪しいもんだ。

ドヌーブにとっても、こんなに地をさらけ出した役ってのは珍しいんじゃないかなあ。亡くなった実姉フランソワーズの存在やファビエンヌという役名も含めて、かなりドヌーブの実像に近い気がします。「昼顔」「リスボン特急」なんかを思春期に観てスゲエ美人だなぁと思ったり、「終電車」を観て「フランスのメリル・ストリープ」かなと思ったりという浅いドヌーブ歴の俺でも、近年脇に回ったり恥じらいを捨てた役に挑戦したりと、活躍に注目をしております。シモーヌ・シニョレの貫禄と怖さも出てきたら、ほんと無敵ですよね。
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