カカポ

真実のカカポのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.0
柔らかな秋の光は大きなガラスの窓を通って部屋を照らし、庭の木々は葉を落として家の周りを包む。母と娘とその家族がその中で暮らしているのを私はその場の空気になって見ていた。それほどに透明な芝居。

決して大きな出来事が起こるわけでもないし、声を荒げるような場面もない。でも見てしまう。目がその表情を、仕草を追ってしまう。そうだよね。本当は人生ってどんなに複雑な感情を抱いても、演技みたい怒ったり泣き崩れたりってしないよね。だからこそその時の緻密な感情を吸い上げて芝居にするのが女優の仕事。24/7全部が女優にとっては仕事。それがわかっていても他者からしたら一緒にいると孤独が深まる。

でもそれによって見えっ張りで嘘つきで、でも女優という人生に魂を捧げてるファビエンヌという人が余計愛しく感じられた。私は多分ずっとこの映画をリュミエールの視線で見ていたんだと思う。彼女は人生を芝居に売った自由で奔放でひどい母親だったかもしれない。でも自分以外の誰かにそう言われたらきっとそいつを絶対に許さない。そう言う関係なんだと思うし、多分それはまた確かに愛なんだよな。

どんなに願っても手に入らない母。その母を見続け、目を背けようとしたけどやはり見てしまう娘のリュミエールのいつも泣きそうな目に吸い寄せられてしまう。
最後の最後に二人が辿り着く抱擁も結局は母親にとっては芝居の種になる。でもあの和解を経たリュミエールにとってはそれすらもおかしくて嬉しかったんじゃないかな。だって彼女は女優である以前に彼女にとって一人しかいない母親なんだもん。

シャルロットが手すりをポンポン叩きながら降りて行ったり、父親と話しながら帽子をクルクル回したりするのも自然で演技の中ということを思わず忘れてしまう。本当にこの人は人をそのままでいさせることが上手いなあ〜
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