昼行灯

双生児 GEMINIの昼行灯のレビュー・感想・評価

双生児 GEMINI(1999年製作の映画)
3.9
全員眉なしなのに何故か不気味さがない、、眉毛を抜かずに化粧で色消してるからか、、?

江戸川乱歩の耽美さはほとんど重視されていない。手ブレの酷いカメラは緊迫感や動揺、おどろおどろしさを強調し、その際のロック風の音楽は大正時代の雰囲気とは浮いており異常な事態を醸し出す。登場人物の台詞が小さいのに比べて、効果音や音楽の音量が大きすぎるという齟齬も観ているものにショックを与える。

本木雅弘の演技がうますぎて怖い。一人二役で双子を演じているが、兄の助けを呼ぶ声の悲痛さと弟の歪んだ笑顔を同じ時期に演じることが可能なのかと目を疑った。顔の造形は本木雅弘に変わりないのに、目ひとつとっても、虚ろな兄と瞳孔のバキバキに開いた弟では全然違う。ライティングの演出もよくて、古井戸の入口から光が射し込む兄の顔は、上からの光で骨格が浮き立つようで痩せてみえる。古井戸の入口から顔を覗き込む弟は、外の灯りがバックライトと反射光の効果を果たして、不自然で不気味に映っていた。

ドッペルゲンガーの2人が出会うまでの伏線として、部屋の窓や押し入れの中の鏡、手水の水面、それを注視する兄のショットが入っていた。2人はドッペルゲンガーであるだけでなく、物語が進むなかで相手の存在に同化していくのだから、まさしく鏡像段階を再現しているといえる。鏡像は自分であると言い聞かせる一方で、アイデンティティを固着させたいという欲望を持ち合わせる両者は生存をかけた戦いに挑む。一方が相手を襲う時の撮られ方が同じようなカメラワークで撮られていたのもなんとも皮肉だった。

リンもまた兄と弟で性格を変えており、1人で2役をやっているようでもあった。序盤リンは他の登場人物が画面外を見たらいるみたいな登場の仕方が多く、ミステリアスな女性として描きたいのかと思ったら、以降そうでもない。後半の河原で着飾って本木が通るのを待っているシーンでは、表情豊かな様子を正面から撮られることが多くコミカルな女性として映る。
結局最後には、井戸での生活を経て貧民同然となった兄がリンを迎えに行く。この時の兄は弟を内包した形で兄をやっているわけだから、兄弟をともに愛したリンとしてはハッピーエンドなのだろうが、リンは兄に対する性格のままでいるだけでいいのだろうかと思った。リンが本木雅弘に兄弟2人分を求めるならば、2人分のキャラクターで接する必要があると思うが、、ラストで弟が死んだことを悲しみもせず子供を産んでてちょっと残酷だなと思った😢
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