YUKi

ビューティフル・ボーイのYUKiのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.3
手を差し伸べる者、
差し伸べられた者同士が
足掻いても足掻いても解決できない

愛情を与えても与えられても、
満たされていようがいまいが、
解決できない。抜け出せない‥

ドラッグ依存問題の苦悩や実情を
綺麗ごとはさておき、という視点で
丁寧に描いているぶんだけ痛かった。

ドラッグ依存症の息子ニックを救おうと
抱えきれないほどの自責のもと
手を差し伸べる父親の姿は、
意外なほど頼りなく不器用で。

有り余るほどの父の愛情は伝わるが
とにかく、手探りであらゆる解決策を
模索しても、何が足りないのか
全くわからないままだ。

「なんでそこで追いかけないのか」
「なんでそこで諦める?」
‥なんで?を数えたらきりがない。

中盤まではそんな父親の行動や
判断力に疑問を感じたけど、
依存症は病気ではなく、特効薬もない。

そもそもニックは6つの大学に受かるほど
賢明で、美しく、生活環境にも
恵まれている。

それでも、彼にしかわからない渇望は
決して潤うことはなく‥。
更生施設に入所しても
大学生活を送っても、
産みの母親の元で暮らしても再発。

結果、それでも抜け出せない
という着地点。それでも寄り添い
まだまだ手探りを続けていくしかないという、
ありがちなハッピーエンドに落とさなかった
生々しい現実味が辛い。

堕ちてなお堕ち続ける者に
罪だけを押し付けない構成が、
薬物依存と犯罪者を直結させない価値観が、
いまだ地続きで深刻なこの社会問題に
一石を投じるきっかけになれば良いと願う。

それにしても、
父親役のスティーヴ・カレルと
それに全く劣らない息子役
ティモシー・シャラメの
演技力の凄まじさよ‥。
YUKi

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