YokoGoto

ビューティフル・ボーイのYokoGotoのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.1
<人は人を救えるか>

ドラッグであろうが、アルコールであろうが、ギャンブルであろうが、依存症という言葉ほど、自分たちの身近にある心の病はないと思う。『依存症』というと、まるで症状を表す言葉に聞こえてしまうが、明らかに重篤なメンタルヘルスの問題であり、心のみならず、体までも支配する軽視してはならない病気である。

その反面で、これら『依存症』を抱えている人と、今の自分とは完全に乖離されているものではないとも感じる。誰だって、ちょっとしたボタンの掛け違いから、簡単に『依存症』と向き合う事になるリスクはあるのだ。逆をかえせば、決して遠い存在の病気ではなく、いつも身近に感じてちゃんと向き合わなければならない他人事ではない問題だと心の底から思う。

本作は、勉強もスポーツも万能だった少年が、ドラッグ中毒になってしまい、そこに立ち向かい挫折を繰り返す実話をベースにしたお話だ。物語は彼を支える父親の目線で描かれている。

主人公の少年は、依存症と向き合いながら、後に脚本家として成功を納めた。しかしながら、少年がドラッグ依存と向き合う日々は、誰の目から見ても壮絶で、絶望の中に絶望しか感じられない。

そんな彼を、立ち直らせようと支える父親も同じように、絶望と絶望の中で出口を見失う。

答えがあるようで、答えのない問いほど難しく残酷なものはない。果たして、この問いを解けるのだろうか?いや、解くことに意味があるのだろうか?果たして、問いなどあるのだろうか?とさえ思う。

本作は、とにかくドラッグ依存の息子役である、ティモシー・シャラメがすばらしい。彼ではなく、別の俳優さんが演じていたら、全然、違う雰囲気の映画になっていたのではないだろうか?とさえ思う。それほどまでに、ティモシー・シャラメの存在感は、唯一無二の存在のように見えた。

本当に素晴らしい役者さんだと思う。
ティモシー・シャラメの演技を見ているだけでも、大満足な映画でもある。

決して、涙と感動の物語でもない。
全編とおして救いが無いし、出口もなかなか見えない。
きっといろんなものが危うくて、壊れやすいものに違いない。


だけど、『人は人を救えるか?』という最大の難問を投げかけ、それに答えを見つけようとして、観る人の心を震わせたという意味では、非常に価値のある映画だったと思う。ぜひ、御覧ください。