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ビューティフル・ボーイのmappiiのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
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気づいた時には、もう手遅れだった。
甘えが導いた結果だから。
薬物依存の恐ろしさ、取り返しにつかなさが全面に出た、メッセージの強い、美しい作品だった。

何度も立ち直るチャンスを与えてきた父。
薬物の何がいけないのか理解しておらず、ただただ縛られる現実が嫌で、何度も何度も何度も薬物に手を出してしまう息子。
昔は本当に仲の良い親子だったのに、どこでそれは失われてしまったのか、お互いに理解できそうになくて、もどかしかった。

縛られるのが嫌で、嘘をつくことも癖になってしまったニック。
それがどんどん信頼を失い、自分の首を絞めていることに気づかない。
「欲は少ない方がいい」と詩の中ではいって言ってるけど、それに執着しすぎるのも恐ろしい。
そんな矛盾を感じた。

最近観た薬物映画といえば『トレインスポッティング』やけど、それよりもずっとリアルで、美しくも切ない作品だった。
薬物依存症になってしまった本人と、その親、両方の立場から、様々な葛藤や苦しみ、悲しみ、怒りが描かれるから、観ていて本当に苦しかった。やりきれない思い。

多くの人は、薬物の世界なんて全く縁のない世界に住んでるから、学校でその恐ろしさについて学ぶだけだと思うけど、この映画は、薬物依存がどんなものか、どこまで底無し沼なのかを疑似体験させてくれた。

そして、ティミーの出てる作品は全部これ言ってると思うけど、とにかく美しい。
まさしく、”Beautiful Boy”。
落ち着いた声で話しているところを聞くことが多いから、ドラッグの副作用で怒るシーンは、本当に新鮮で、自分の抑制が効かなくなっているのが、つくづく伝わってきた。
それと、ティミーは、内に秘密や闇を抱えた役が本当に似合う。
お兄ちゃんとしての優しくて無邪気に妹、弟と遊ぶ姿も印象的だった。
歳の離れたお兄ちゃん欲しくなった。
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