何もかもが究極的

愛がなんだの何もかもが究極的のレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
2.9
物資的には豊かだけど、それ故に現状に満足してしまって、夢とか希望といった将来の事など棚上げして、目の前の欲求に踊らされる、目的なき日本人の話。この映画は上手く作られているし、エンタメとして成立もしているが、見ていて不安にさせられる。それは主人公が何も成長しないまま映画が終わり、恋愛ジャンキーの如くより深みにのめり込んでしまうからだ。
その恋愛も恋愛と呼べるのだろうか?
小さな仲間内でのマウントの取り合い。相手が優しいと甘えるレベルは、青天井になり人間関係が破綻するまで歯止めが効かない。その均衡を保つには、自分もマウントの取り合いに参戦しないといけない。それがこの映画の結論だ。
俺が上、あいつが下、でもあの子よりは俺は下みたいに暗黙の階級制度を肝に銘じて、自分の人生を約束してくれる訳でもない人間にヘコヘコし、そうではない人間に威張り散らしてストレスを発散する人生って意味があるのだろうか?
この映画で彼らは死にたいとは冗談でも言わない。それは死にたいというと、自分が生きていても死んでいても、別に何も変わらないという現実に直面するからではないだろうか?

そういえば、この映画には食べるシーンがよく出てくるが1つも美味しそうに見えず味気ない。
マモちゃんこと成田が、好きな女に媚びる為に良さがわからないと言った湯葉を美味いというように、食べ物が味のないただのファッションになっている。そういえば、自分が東京にいた時も砂を食っているように全てが味気なかったように思う。余裕がないと食事も色あせたものに見えるのだろう。