ヤマダ

斬、のヤマダのレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
4.3
塚本監督初の時代劇作品だが、本作も監督のこれまでの作品に通ずる、純度100%塚本色の映画だった。時代劇の定型に沿う素振りを見せつつ、時代劇、または活劇にあるヒロイズムに逆らい、懐疑的な視点で以って暴力の行使とは如何なる事か、という事を刀の様に鋭く、実直に見せつけてくる。
人を斬る、その一太刀が暴殺の連鎖を生み、その世界を地獄に、男を修羅に不可逆に変えてしまう話、人を斬った事の無い男と、斬り慣れた男のある種の「男性」性の境界の話でもあり、そのあたりを着実に含ませる所が塚本監督らしく、それがまた非常に巧い。
タイトルにある読点の意味するところのように、人を斬り伏せたら終わり。ではなく、斬り殺める事で更なる悲劇が始まる。そういった負の連鎖こそが「暴力」がもつ性質そのものであり、それこそ暴力的な世界と隣り合わせに生きる我々が、努努忘れてはならない事なのだろう。
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