バートロー

ザ・ファブルのバートローのレビュー・感想・評価

ザ・ファブル(2019年製作の映画)
3.7
主演とファイトコレオグラファーを兼任したマスタージュンイチオカダの姿が見たくて駆け込んだ。出来は思いの外原作に忠実でまずまずだけど、もう少しやれたのではないか?という気持ちが入り混じる感じだった。

『図書館戦争』シリーズよりアクションに重きを置いているのは当たり前として、良作『散り椿』では拝めなかった近代的ガンファイトが充実しており、何よりも任侠物らしいバイオレンスがある。意外と言ってはかなり失礼だが、ドラマ面が役者達の好演もあってちゃんと『ファブル』になっていて良かった。外したギャグはほとんど原作の空気感を再現していたし、筋骨隆々全裸まで見せたマスター岡田、一人だけ仁義なきシリーズのつもりで張り切っている柳楽優弥、死神そのもののような佇まいの佐藤浩市が拝めるなどの収穫が多い。

しかし、肝心のアクションが割にもっさりしていて、一昔前感ある仕上がりになってしまっているのは頂けない。量には満足しているが、質には満足していない。贅沢なことだが、求めていたのは岡田准一版『ジョン・ウィック』であり(ジョンウィック1でさえ言ってしまえば一昔前だ)、その点に関してはカメラや編集の面が国内レベルでも遅れを取っていた。マスター岡田も福士蒼汰もまだまだ出し切っていない、余力十分なまま終わったという感じであり、それは勿体ないことであるが、同時にまだまだやれるという希望でもある。このレベルに満足せず、次はもっと凄い映画が作れるかもしれないと期待している。

アクションスターは言葉の壁を超えて国境、民族、人種をやすやす凌駕する。そんな存在になれる可能性を十分に持った岡田准一にとって今作がまだまだ発展途上中の作品であることを願っている。マスター岡田がアクションスターとしてサニー千葉やデューク真田のバトンを受け取るためには必要なのはアクションの傑作である。