O次郎

デス・ショットのO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

デス・ショット(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「ハリウッドアクション映画」。
ともすれば世の中で一番頭数の多いジャンルであろうが、それに対してどういうエッセンスを求めるかで評価が分かれるであろう作風の一作。

大多数の人はブルース=ウィリス目当てで、それも彼がドンパチで活躍する作風を求めてるかと思うが、結論から言うとそこからはだいぶ逸れている。
ウィリスは定年退職した元警官という役柄もあってか、直接的に銃を取って敵と向き合うのはラストのみ。
それまでは、まるでやり手の営業マンみたいな刈り上げカットが似合い過ぎるシャープなフェイスラインの悪役顔が特徴の主人公フランク=グリロを犯人推理面でサポートし、中盤の犯人の捜索と追跡も専ら主人公が担当。
つまりはウィリスが安楽椅子探偵みたいなポジションであり、いうなれば『ダイ・ハード』一作目で事件現場のビル内で孤軍奮闘するマクレーンを外から無線でサポートしたレジナルド=ヴェルジョンソン演じる巨漢の黒人警官みたいな役柄とでも言おうか。
そうした意外性のある配役を楽しめるかがこの作品の最大のキモかと思う。
ドンパチに乏しくてもウィリスの存在感と説得力は流石というところ。
他には主人公の妻役のオリビア=カルポがなんともエキゾチックな美しさで画的な華もきちんと確保されており嬉しい限り。

筋立てとしては、家計に夫婦そろって四苦八苦するしがない中年銀行員の主人公が自分の勤務する支店に強盗に押し入られ、FBIからの疑いを不服として隣人の元警官の助けを得ながら地道に犯人を見つけるが、報復として妻子を人質に取られ...というまぁ典型的な代物。
しかしながら早過ぎも遅過ぎもせず地道に重ねる推理、重火器で武装する元軍人の犯人に対し多勢でもいたずらに犠牲を増やす警察の失態等、ヒロイックな展開を廃したリアルな物語展開はこれはこれでなかなか見応えが有る。


最後に作品に一味添えているのが犯人のキャラクター性。
世間に見放された退役軍人である認知症の父親を持つ独身の中年男性。
金銭的な苦しさと周囲の無理解から銀行強盗に手を染めたことは一応暗示されるものの、強いイデオロギーは無くサイコパスでもない単独犯であり、然したる世間への憤りを叫ぶ事も無く警官隊に追い詰められ射殺される...。

半世紀前の円谷特撮の名作『怪奇大作戦』の1エピソード「かまいたち」。
平凡を絵に描いたような、集団就職で上京した町工場の若者が通り魔的に夜半の通行人を手製の真空発生装置でバラバラ殺人の餌食にしていくが、最終的に警察に捕まった彼が取調室での追求にその犯行動機を黙して語らない場面で幕を閉じる。

なんとなくそれを思い出した次第。
ともあれ、イケメン主人公が肉喰って敵とドンパチやってブロンド美女のヒロインと懇ろになる、というようなテンプレに飽きて、日常の延長線上にありそうな風変わりなアクション味わってみたい人はどうぞ。
O次郎

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