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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのtomoのレビュー・感想・評価

4.5
テレビ版・外伝に引き続き、ひたすらに真っ直ぐ王道路線で感動させる実力派。
少佐との因縁の行く末については、前作までの描写だけではどうとでもできそうなところ(選択肢としては、もう亡くなっている、生きているとわかるが会わないまま終わる、再会を果たすが別々の道を歩む、再会し想いが通じ一緒に生きる)、どうなるのか楽しみに見た。結果的に、こういう流れだったらいいなあと勝手に妄想していたものとは違う決着だったたが、そこに至る流れも感情の描き方も衒いがなく納得のいく終わり方。
映画全体の構成として、作中からは未来にあたる時代の人物が古い手紙を契機に過去を辿る旅に出るという掴みで過去のストーリーの復習をするのだが、その人物も単なる導入役というだけではなく、テレビ版の1エピソードに連なる人物であり、そこはそこでストーリーがあるという入れ子構造。更に、少佐の話と並行して、テレビ版の上記エピソードを彷彿とさせるゲストキャラの話も進み、どん底にあるヴァイオレットを立ち直らせるきっかけになるという流れも良い。普段から少佐恋しさに感情を爆発させ盲目になりがちなヴァイオレットが、どん底の状態にありながら、それよりも客である少年との代筆の大切な約束を優先しようとしたことは彼女の成長という意味で非常に感慨深く、それを契機に立ち直り手紙を書く形で前を向けたことも素直によかったと思える。
電波塔に電話といった時代の移り変わりを感じさせる小道具の使い方のうまさ、その中でも手紙の持つ変わらぬ力。シリーズを通じて手紙の力を描き続けてきたからこそ、一通の手紙で一瞬にして頑なな心が融けることに無理を感じない。
グーサインで「その後」を微笑ましく想像させつつ、終わり方はこれまた王道の綺麗な締め。いい映画を見た。
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