おさかなちゃん

凪待ちのおさかなちゃんのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
5.0
凪待ち、心に刺さりました。
静かな余韻が長く心に残ります。
あまり予備知識なく鑑賞した私は、いい意味で裏切られ続けて、
最後まで心揺さぶられる展開でした。
主演の香取慎吾の佇まいは圧巻。
抑えたさりげない演技描写に唸いました。
愚かで情けない男の顔、深く悲しみを押し殺した表情、
まるで自傷行為のような悲しい暴力、諦念、悔恨、絶望・・・
画面いっぱいに顔が映っても、画が持つし色気がある。
香取慎吾の映画作品をもっともっと沢山観たいと思いました。

特にギャンブルへの依存性を描写した『傾き』の表現、
すり鉢状の競輪場の『傾き』と相まって、
深く印象に残りました。
GA患者特有ののめり込んでるときの目の表情も
凄みがあってうまかった。

あと、西田尚美・恒松祐里の両女優のキャスティング絶妙!
透明感、儚げな芯の強そうな横顔など雰囲気がよく似ていて
まるで本当の母子のよう。
リリーフランキー・音尾琢磨 ・吉澤健はさすがの力量。
文句なし!間違いなし!

作品全体は、ムダなシーンが一切なく、
純度の高い、引き締まった印象。
大規模な作品だと色んな忖度が入ったり、冗長になったり、
結果何だったのかぼーんやりしてしまいがちだが、これはその逆。
すごく明確に、強烈に、監督の個性やメッセージが反映されている。
少数精鋭にすべて委ねて、短期間でぎゅっと撮った作品だと思った。
だからこその、この、高純度。
船頭多くして船陸に上がる…の逆。
幾層にも重なった、輻輳的な深いテーマを描きながらも、ぼんやりせず、言いたいことがダイレクトに伝わってくる映画でした。

あと、石巻の今の風景、震災の残した様々な傷についても、
さりげなく、だけど、丁寧に誠実に描いてありました。
エンドロールを観ながら、この作品が「鎮魂歌」のようにずーんと響いて涙が止まりませんでした。
『弱き一人でも、自分は一人じゃないと気付けたとき、
 強く立ち向かう事ができる』
それでも続いてゆく人生。立ち上がりまた歩き出す。
海の凪を待つように、いつか心が癒える日が来ることを待ちながら。
(長々すみません)