凪待ち、心に刺さりました。
静かな余韻が長く心に残ります。
あまり予備知識なく鑑賞した私は、いい意味で裏切られ続けて、
最後まで心揺さぶられる展開でした。
主演の香取慎吾の佇まいは圧巻。
抑えたさりげない演技描写に唸いました。
愚かで情けない男の顔、深く悲しみを押し殺した表情、
まるで自傷行為のような悲しい暴力、諦念、悔恨、絶望・・・
画面いっぱいに顔が映っても、画が持つし色気がある。
香取慎吾の映画作品をもっともっと沢山観たいと思いました。
特にギャンブルへの依存性を描写した『傾き』の表現、
すり鉢状の競輪場の『傾き』と相まって、
深く印象に残りました。
GA患者特有ののめり込んでるときの目の表情も
凄みがあってうまかった。
あと、西田尚美・恒松祐里の両女優のキャスティング絶妙!
透明感、儚げな芯の強そうな横顔など雰囲気がよく似ていて
まるで本当の母子のよう。
リリーフランキー・音尾琢磨 ・吉澤健はさすがの力量。
文句なし!間違いなし!
作品全体は、ムダなシーンが一切なく、
純度の高い、引き締まった印象。
大規模な作品だと色んな忖度が入ったり、冗長になったり、
結果何だったのかぼーんやりしてしまいがちだが、これはその逆。
すごく明確に、強烈に、監督の個性やメッセージが反映されている。
少数精鋭にすべて委ねて、短期間でぎゅっと撮った作品だと思った。
だからこその、この、高純度。
船頭多くして船陸に上がる…の逆。
幾層にも重なった、輻輳的な深いテーマを描きながらも、ぼんやりせず、言いたいことがダイレクトに伝わってくる映画でした。
あと、石巻の今の風景、震災の残した様々な傷についても、
さりげなく、だけど、丁寧に誠実に描いてありました。
エンドロールを観ながら、この作品が「鎮魂歌」のようにずーんと響いて涙が止まりませんでした。
『弱き一人でも、自分は一人じゃないと気付けたとき、
強く立ち向かう事ができる』
それでも続いてゆく人生。立ち上がりまた歩き出す。
海の凪を待つように、いつか心が癒える日が来ることを待ちながら。
(長々すみません)