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凪待ちのmmoeのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.3
ギリギリ社会に繋がってる男が、とある出来事で突き落とされて、転がるに転がり暴れながら自ら加速させて転がり堕ちて、堕ちて、堕ちていく。

私はその堕ち方を知っている。それを加速させる言葉が、人の心に時折顔を出す事を知っている。その言葉が社会に張り巡らされて、人の心に宿っている事を知っている。

私はこの男と同じ社会で生きている。誰かにとって都合の悪い事実が形作る街に、その事実を無視して生きている。男もそれを無視する人間の一人だから、堕ちていく自分に未来が訪れる事を期待しない。期待する資格も、力量も器もないと、堕ちに堕ちていく。

これまで役者としての香取慎吾を、私が生きる社会の上にコーティングされた氷の上で爛々とした目で「全員仲間」って心ここにあらずで義理人情を叫ぶ、嘘くさい人として見ていた。だけど、この映画の香取慎吾は、そんな氷の下が、俺の生きる世界なのだと、ギリギリ光が宿る死にそうな目で生きている。そこに宮崎吐夢演じる、ギャンブル中毒のナベさんがいる。「どうしようもない」と切り捨てられるなべさんを、香取慎吾は同じ血の通う仲間だと思いながらも、自分もナベさんもどうしようもないって思っている。

「どうしようもない」と人を切り捨てるどうしようもない社会の中で、生きる道を模索している映画のような気がする。
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