Yuki

ドクター・スリープのYukiのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.5
あらすじどうこうではなく、
前作踏まえての製作背景により、
ここまで評価難しい、
作品としてややこしい映画も珍しいのではないか。

まず結論。
映画版の続編として観たらかなりの駄作。
原作版の続編として観たらかなりの良作。

有名な話だが、前監督キューブリックが作成した映画シャイニング。
これは原作者キングから酷評されている。
キング自らが再度製作に携わりドラマ版を作り直した程だ。

しかし、原作未見の方からしたらあれはまさにホラー映画の金字塔だ。
シャイニングのレビューにも記載したが、
どこぞのB級ホラーを10本観るなら、
あの上質なホラーの世界を10回堪能した方がずっと良い。
それだけ歴史に残る傑作だ。

そう、問題はここ。
原作者キングと原作派の意向を尊重せねばならぬ。
かといって映画派の期待にも応えねばならぬ。

この難問にマイク・フラナガン監督が出した答え。
それは中間。どちらともの意見を取り入れた作品へと仕上げたのだ。

結果、正直映画シャイニングがもう一度観れる!
と、期待に胸を膨らました方からしたら、
恐らく終始期待外れに終わるだろう。
なんせ前作の恐怖なぞ皆無の超能力勝負を見せられるのだから。

もし私が上記のウラ話を知らずに、
期待ルンルンで映画館で観てたら、
怒りでポップコーンを握り潰していただろう。

しかし、原作派からしたら恐らく前作では見れなかった一つの「答え」を提示してもらえた、と思うのでは。

「どっち派」などというオトナの事情を取っ払い、
一つの「ドクタースリープ」という作品のみに焦点を当てると、
ホラーとして観るとギャップを感じるし、
所々で多少のチープ感は拭えないものの、
全体的には非常に丁寧に作り込まれている。

長くなって恐縮だが、
これだけの難題に対して
製作陣が並々ならぬ熱意を持って応えたことは
十分すぎるほど伝わる。
特にクライマックス。
半端ないリスペクト。

そういった意味では、
ある意味どちらともの意向を
なんとか汲み取ろうと奮闘した監督は、
今作1番の苦労人であり、
今作1番の天才であろう。

ということで製作陣への敬意も含めて3.5。
ありがとうございました。
Yuki

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