HACHI

マチネの終わりにのHACHIのレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.9
とても淑やかで、艶やかで。
それで感情の抑揚、機微がしっかり伝わってくる作品になっていました。

"過去は未来によって変えられる"
映画版は特にそれを主題とし、浮き彫りにするような描き方をしていたように思います。
過去に抱いた想いを今改めて振り返ってみた時、当時抱いていたものとは違った感覚になっている自分がいる。
誰もが経験し得る、そのある種思いがけない発見のような気づきを作品を通して知ることができるのは、1人の目撃者として悦ぶべきことなんだろうな、とも。

ラストへのアプローチも原作とは異なっていましたが、これも蒔野と洋子を再び繋げる(その予感をさせる)色気あるかたちだったな、と。
さらには、素敵という言葉では形容するに足らないほど繊美で、作品にそっと彩を添え続ける音楽に、終始身を預け、浸りっぱなしでした。

二人があの後、どう時を刻むのか。
その先に想いを巡らせることは、
きっと視た者だけに赦された、
愉しみのような幸せの"硬貨"なのかもしれません。
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