hiroki

アサシネーション・ネーションのhirokiのレビュー・感想・評価

4.0
主人公リリーが住む街で、個人情報流出事件が起こる。メールやSNSなど、普段人の目に触れないと思って書いているようなものも、不特定多数の人に見られてしまう恐怖。やがてその事件は人々から理性を奪い、暴力にまみれたイカれた世界へと姿を変えていく。

リリーの語りから物語がスタートし、ちょっと変わった雰囲気を感じた。内容があまりないサイコスリラーなのかなと思っていたけど、今の時代の怖さをしっかり象徴していて、最後のオチまで含めてよくできた作品だった。

現代はインターネット時代だから、この映画で描かれていたようなことは現実に起こりうると思う。自分だけのプライベートで、人の目に触れることはないと思っている情報が、ネットで拡散されたらと思うと、これ以上の恐怖はないのではないだろうか。

そもそも人に見られて困るようなことを携帯やパソコンに残しておく方が悪いという人もいるかもしれないが、自分の悩みやモヤモヤを吐き出す場所の1つにSNSがあると思うし、友達があると思う。もし、自分の気持ちを吐き出せる場所がなくなってしまったら、精神的に潰れる人が増えてしまうだろう。

ネットを使う時にリスク管理はもちろん必要だが、制限しすぎるのもよくないと私は思う。

そして、ネットの使い方以上に問題なのが、全ての情報を簡単に信じてしまう、人々のネットリテラシーの低さだ。一度情報がネットに上がると、ここぞとばかりにネット民が群がり、情報のソースや犯人探しを始める。そのスピードは警察さながらなところもあり、一概に悪いとも言えないが、その事実のみにしか目を向けない人が多すぎる。「犯人は〜らしい。」という事実を鵜呑みにし、その人をさも極悪人かのように扱い始める。この情報は本当に正しい情報なのか、正しいとしてもその人を攻撃する必要があるのかといったことをよく考えて行動に移さなければいけないと思う。事実をそのまま受け取る人が多いせいで、1人ではそこまでの力を持たなかった個人が、集団として大きな力を持ってしまう。犯人を見つけ出して殺そうとしたこの街の人々を見れば、その恐ろしさがよくわかる。もはや警察組織は機能しておらず、完全にカオスな世界と化していた。

この作品を見て、やっぱりネットの世界は怖いと思った。気持ちを吐き出せる場所としてポジティブな役割を果たしてくれる一方で、誰に見られているかわからない恐怖や、顔が見えない人を信頼することのリスクが伴う。1人1人がネットの使い方をしっかり考え、自分を守れるようにしておくことが大事だと思った。

ラスト、アクション映画っぽいテイストになったのが可笑しかった。犯人の動機が「ウケ狙い」だったことに、妙に納得してしまった。
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