StormHunter

岬の兄妹のStormHunterのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.9
・あらすじ
ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫。仕事を解雇されて生活に困った良夫は真理子に売春をさせて生計を立てようとする。良夫は金銭のために男に妹の身体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたる。そんな中、妹の心と体には少しずつ変化が起き始め……。

相当キツい内容ですが、終始画面に釘付けでした。
背景などを抜きにして、やっている事は最悪というか、酷いことなんですけど、不思議と嫌味がないんです。悪や犯罪として描いているのではなく、あくまでとある兄弟の生活の観察として描いているので、そう感じたんだと思います。妹を売春に使うという最悪の決断には、どうしようもない迷いがあって、やりきれなさがあって、苦しみがあって、その表現や演技が本当に見事でした。
そして妹は嫌そうにせず、むしろ"仕事"を通して僅かではあるものの自分の居場所を見つける。鎖で繋がれ、目張りされていた部屋に小さく灯りがつく。
最悪な状況でも、自分たちは生きていることを実感する訳です。

ラストも賛否はあるだろうけど、様々な解釈が出来て良いと思いました。
振り出しに戻ったのか、それとも新しい日常が待っているのか。
岬の先端で、海に堕ちるのか、踏み止まるのか。
踏み止まった陸に、果たして酸素はあるのか。

余白の使い方が上手かったです。
紛れもなく良い作品だと思います。
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