No.3634
『菊とギロチン』や『由宇子の天秤』で印象的な演技を見せた和田光沙。
また、小人症の青年・中村を演じた中村祐太郎は、小林勇貴監督の『全員死刑』でもかなりトリッキーな役をやっていた。
その中村祐太郎は監督もしており、彼の監督作『太陽を掴め』は、とても瑞々しい映画で面白かった記憶がある。
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と、なかなか個性的な俳優陣の芝居が面白かったし、シーンによってかなり撮り方を工夫してたから、最後まで面白くは見れたけど、
「映画」としてはなーーんにも響きませんでした。
そりゃそうだよね。だって僕も、このお兄さんと同じで足に障害があるんだけど、一生懸命働いてるからね。
だから全然この兄妹、底辺でもなんでもないじゃん。
「お兄さん、めっちゃ行動力あるし、足が悪くても全然動けるんだから、クソを投げつけてる暇があったら働けよwww」
それで終わり。ごめんなさいね。
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ただ、だからこそ、その怖さを描いてるんだとしたら、それはそれで意味がある。
つまり「日本では、まがりなりにもセーフティネットがあるし、職安や役所に行けば仕事が見つかる可能性はあるのに、
そのことを当事者が知らないか、思いつかないことと、周りが誰も教えてあげない」ことの怖さ。
だって、警官のお友達がいるのに、ただの金の貸し借りの関係で、
仕事の相談とかなんにもしないし、もっと親身になってあげないの、単純に怖くない??
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ただ、僕はこの映画からは、その点よりも、「障害者と性」の問題のほうが興味深く見られた。
障害者と性というと「37セカンズ」という傑作があるが、ぜひそちらとも比較鑑賞してほしい。
あと、原一男監督のドキュメンタリー「さようならCP」。これもCP(脳性麻痺)者とセックスの問題が出てくる。
別に映画の世界では、障害者とセックスって、タブーじゃないのよ。
この「岬の兄妹」のように、センセーショナルに、ショッキングに取り上げるから、「あれ、タブーなのかな?」って思っちゃうだけなのよ。
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で、大事なことだから最後に付言しますが、私は片山監督の『さがす』は、今年の邦画ベストです。こっちはマジでめちゃめちゃ好みw
ポン・ジュノの助監督をやっていた片山監督の映画には、『岬の兄妹』も『さがす』も、
日本的な怖さがありながら、韓国ノワールの香りも濃く、好みではある。
残念ながら本作『岬の兄妹』に関しては、私が障害者当事者ということもあり、第三者的に見られなかった、ということ。