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岬の兄妹のgnspのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
5.0
自分が今まで見た作品の中で最もどん底の貧困。
あまりに底も底すぎて、自分たちは「貧困ポルノ」として「こうはなりたくないね」なんていって消費して満足してるんじゃないかと、その心理を暴く働きをしてみせる。
そして改めて「なぜこういった作品が作られ、世に放たれていくのか?」を考えなければならないと、強く感じさせる作品。


兄妹の状況とともに、映るシーンの昼夜や空模様が明らかに変わっていて、それが最後まで徹底されている。
どん底の夜に一線を越えてから、どんどんと明るくなっていく兄妹の視界。
やってることは最悪。なのにそこには大きな「幸福」を感じる。

でもその明るい「希望」はただの搾取なんだよなあ…と冷静になって思う。
まさに「弱い者たちが夕暮れ、更に弱い者を叩く」。

倫理の外で無垢であり続ける真理子。
彼女を世界の残酷さを守るために、それを一手に受ける良夫。
この良夫が善人であろうとしない、世の穢れに蝕まれたクズなのがとても良いんだ。

桜舞い散るような画や逆光の港と、非常に美しく印象的な画、そして最終シーン。


この作品が放たれたことによって、これから先、生半可な貧困描写は許されなくなってしまった、とすら感じる。
力強すぎる処女作。
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