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炭坑のmhのレビュー・感想・評価

炭坑(1931年製作の映画)
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WW1終結後、国境が変わってドイツとフランスに分断された炭坑が舞台。
フランス側の坑道で大規模火災が起こる。少し前まで敵だったドイツ人炭坑夫がそれを助けにいく話。作中、二カ国語が飛び交う構成。
現在の作劇作法だと、助けにいく動機を用意しなきゃならない。WW1の塹壕戦で助けられた恩があるとか、自分だけが知ってる抜け道があるとか。
ところが当時はそんな伏線は重要じゃなかったようで、同じ炭坑夫だから、人手が必要だろうからという理由で助けにいくことになる。
このあたりの説得力すごい。
「止まってる暇はない!」
国境検問所のくだりがあちかった。
「撃つな! 助けに来てくれたんだ!」
英語版Wikipediaによれば、実際に炭坑で撮影したのではなく、セットで再現したらしいのだが、落盤事故の様子が真に迫っていてめちゃくちゃ怖い。空気中にガスが流れている描写など、撮影もすげかった。
絶叫したり、もったいつけたりというようなこともなく、生存者を淡々と救助する。
仲の悪かった国同士にせっかく絆が生まれかけたのに、再び、檻を設置してしまうというシニカルな終わり方。
ユダヤ人どうこうは一切なかった。
ドイツ側で使ってた吊り下げ式ロッカーが天井高すぎて面白い。あれって、欧米の炭坑映画でちょいちょい見るけど、一般的だったのかね。
縦坑エレベーターやら、坑道内のトロッコ、馬、地上に戻ってきたときにの飲み物(牛乳?)など、炭坑まわりの細部も貴重。
名作「西部戦線一九一八年」の監督さんなので、複雑な話が作れないわけじゃない。
意図的にシンプルにしていながら、要点を押さえていればちゃんと感動できるので、伏線仕込んだり、ツイストさせたりというような近年の映画に慣れてしまっていることを少し反省したいと思った。
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