たむランボー怒りの脱出

太陽は光り輝くのたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

太陽は光り輝く(1953年製作の映画)
4.0
90分と表記しているサイトが多いが、今日見たのは100分くらいだった。調べてみるとこれはディレクターズカット版らしい。これも『荒野の決闘』みたいに色々あったんだろうか。フリッツ・ラングの『激怒』みたく正気ではない群衆が無実の人間を狩りにやってくる。白人の群れが一人の黒人を殺しにやってくる。この場面の始まりは本当に唐突で、前の場面から切り替わってすぐ不穏かつ緊張感のある音楽が流れる。「何か」を目にして戦慄する黒人住民たちの顔。しかしその何かは写されない。住民はただ画面の向こう側を見て怯えている。といった映像が何度も繰り返される。さっきまでののんびりとした展開からしてこの転調具合は異様に思えるが、こういう大胆な転調の仕方、というよりはもはや間違って異物が混入したかのような場面の繋ぎ方は、もうおそらく現代の映画において出会うことはないんだろうなと思う。リアリズムが金科玉条としてある現代の映画は繋ぎ方が日常生活のリズムを基調としているから肌感覚における「自然さ」が優先されるのに対して、古い映画が基調とするのはあくまでも「音楽」、一本の映画を一つの音楽として考えている節がある。それゆえに大胆な転調ができる。「日常」のようなものは描こうとしていない。「夢」を作り出すのが映画だった。現代の映画の観客は映画を見てしばしば「音楽が邪魔」と言う感想を漏らすが、それは映画が音楽的に作られていないからだ。音楽は日常生活と相容れない。音楽的に作られた古い映画を見て音楽が邪魔だと思うことはない。この映画が作られた1953年はハリウッド第二の黄金期、映画と音楽が真の意味で共にあった幸福な時代なんだろう。ゴージャスな時代だといえる。最近はそういう映画しか見たくない。