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太陽は光り輝くのodyssのレビュー・感想・評価

太陽は光り輝く(1953年製作の映画)
3.5
【ハリウッド古典期の輝き】

最近BS録画にて。
米国南部の田舎町を舞台に、老判事の生き方を描いています。
米国の地域社会では判事は選挙で決まるのですが、その選挙を控えて老判事は多少の選挙運動もしている。
しかし、田舎町では色々な事件が起こるわけで、真摯に対応すると選挙で不利になるような事件も持ち込まれてきます。
それに老判事がどう対処するかが、この映画の見どころです。

もう一つの見どころは、1950年代、ハリウッド古典期のいい面がしっかりと表現された映画であること。

米国南部の田舎町が舞台なので、黒人も多数出てきます。彼らは白人のように栄誉ある職業にはついていない。あくまで白人の使用人の立場にとどまっている。しかし彼らは露骨に差別されたり虐待されたりしているわけではない。それなりに自分の仕事をしっかりとやっていて、場合によっては白人の主人に劣らない機転も見せるのです。

南北戦争に敗北した南軍ですが、旧南軍兵士の団体があって、親睦団体として活動している。逆に北軍兵士の団体もある。その両者が、対立するのではなく、互いに尊重しあって活動しているところが悪くない。

若い白人女性は、自分の意志はそれなりにきっちりと示していますが、乗っている馬車が暴走すると失神してしまい、若い男性に救助されることになる。こういう設定は今どきの映画では考えられませんが、私は古典期の映画としてこういう設定が悪いものとは思えませんでした。女性の失神はフィクション的ですが、それで言うなら、女性が男性と互角に肉体的なアクションを見せるという現代映画の設定だってフィクションだからです。問題は、そのフィクションが美しいかどうか、それだけなんですよね。その意味で、この映画は美しい。

そもそも、不倫女性の扱いは当時は非常に厳しかったわけですけれど、この映画では老判事が聖書を引用することで不倫女性を救っている。とてもヒューマンな映画で、ハリウッド古典期のいいところが良く出ているのではないでしょうか。
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