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この世界の(さらにいくつもの)片隅にのERIのレビュー・感想・評価

4.4
来週「オッペンハイマー」を観にいく予定なので、その前に「この世界の片隅に」を観てからにしようと思ってさ。わたしはこちらの「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を。



すずは、ぼんやりしている子だった。絵を描くのが上手な子。当たり前のように縁談が10代のうちから来てしまうんだなぁ。広島県の呉の人とのご縁。まったく顔も名前も知らない人と、結婚。「困ったねぇ」

昭和19年(1944)だった。新しい生活を始めることになったすずは、嫁として家事をする。夫の母は体を壊して寝たきりだった。この時代は、女は当然のようにケア労働者なんだよなぁ。

すずは強く抗うことなくほんわかぼんやりしながら今いる場所で出来ることを精一杯生きる。空には飛行機の音が聞こえる。

義理の姉はすずにいつも冷たい。すずはマイペースに着物をモンペに裁縫中。嫌味な姉は、鈴を実家に戻すように仕向けたけれど、ぼんやりのすずは2、3日の休暇と受け取り里帰りを。呉に戻れば義姉はずっと居座り続けている。すずは頭にハゲができている。

配給に行くとお米の配分が半分になったり、配られるものが減っていく。街のご近所さんにコツを教えてもらって、帰り道にすみれやたんぽぽをなどを摘んで持って帰る。工夫して暮らしを豊かにするように。

足りないものは手間暇をかけて、大切に大切に。そうこうしていると空襲警報が発令。家の下に防空壕を掘って。絵が好きなすずは畑で軍艦の絵を描いていたら憲兵に怒られてしまったり、蟻に狙われた砂糖をうっかり水の中に溶かしてしまったり。

義母にへそくりをもらって闇市に行った帰り迷子になってしまったすずは、遊女のりんと出会う。すずがひらがなの読めないりんに自己紹介するときに、名前の横に絵を描いて読めるようにして伝えるのとてもいい。

りんさんの「この世界に居場所はそうそうなくなりゃせんよ」って言葉いいなぁ。

りんさんと周作さんがつながってしまった。それでも毎日は続く。どうにも気持ちがすれ違う。水原が来て周平への気持ちに改めて気がつく。好きになっとたんじとたんじゃなぁ。

昭和20年になってから、どんどん戦争が激しくなっていく。彼の海が軍艦でいっぱいになって。空には戦闘機がたくさん飛んでいた。後半、かなりしんどいね。戦争は嫌だね。

周作さんに軍服が届いた。


義父の見舞いの帰りに空襲にあった。地雷爆弾ではるみちゃんとすずの右手を奪われた。たくさんの後悔がすずを襲う。


よかった、よかった、よかった。ぼんやりしてるすずに大きな疑問が頭から離れなくなる。いったい何がよかったのか。



8月6日、広島に原爆が落とされる。
8月15日、終戦。



戦争とはなんだったのか。





9月になって、10月になって。広島に戻ると妹はなんとか無事で、母は原爆の日に行方不明になり父は10月に亡くなった。広島の街は、いつも誰かが誰かを探していた。

広島に原爆が落とされた日の描写は、無言になる。
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