アオヤマーブル

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのアオヤマーブルのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

3年前のときは感想纏まらなかったので今回合わせて書いておこう。

自分はこの物語がとても近く感じていて、
と言うのは、高校までちょうどすずさんの実家のある半径1kmが生活圏だったから。

物語で海苔を作ってる川沿いの土手道をよく友人と自転車漕いでウロウロしていたし、夏休みは花火なんかもした。部活での土手RUNという地獄の種目もそこが舞台。呉では毎夏の海水浴で夜は灰ヶ峰で肝試し。
すずさんの行く先々で自身の青春がフラッシュバックする感覚。
こんなの有りかと。こんな大作が自分とリンクしてくる感じ、いいのかと。

当時は何も考えず皆で騒いで楽しければ良いや、みたいな学生のノリで過ごしていたが、今作を見てそこはかつては・・・という、戦時中と青春時代が繋がる感覚に震えすら起こった。

写真やドキュメンタリー、資料館、もっと言うと被爆した爺ちゃんの話から原爆の被害は十分知っていたつもりだが、
確かにそこに人生があって、その犠牲の上で今の自分がいる、という感覚は、今作の日常を生きる登場人物の心情や、被爆前の広島の街を愛をもって丁寧に描かれているこの映画でこそ、より強く感じることができたのだと思う。

終盤に相生橋で2人がはじめて出会った場所だと語る場面がある。
2人の関係を運命的に結び付けたはじまりの場所であって、これからの2人の再出発の場所としても印象的に描かれているが、同時にこの相生橋はB29の原爆投下の目標地点でもあった。
壊滅させられた街の、そのターゲットとなった地点から、また前へ進もうと誓う2人の姿に、グッときた。

いくつもの人生が確かにそこにあって、それが理不尽に奪われる。
一つの歴史的大事件にいくつもの命の犠牲があって、生きたくても生きられなかった人生が確かにあった。
それを忘れずに今後の人生粘り強く前へ進むしかないと、心に刻みたい。

辛い時期も人生を諦めない人には、世界の片隅にきっと居場所があって出会うべき人がいるということが、この映画からのメッセージだと思って、頑張っていこうと。